テレビのトーク番組『さしのみ』で、司会者のみのもんたさんと、作家で都知事の石原慎太郎さんが出演しているのを見た。みのもんたさんの年齢は60代半ば、石原慎太郎さんは一回り上の70代半ばであろうか。職業柄か、出演者の顔がアップになると、私は話の内容よりその人の表情に関心が向いてしまう。意識しているわけではないが、どうしてもその顔にあらわれている雰囲気や印象について考えてしまうのだ。みのさんの浅黒い顔には、精悍な男の気配がある。仕事に打込んでいる人の自信にあふれた充実感、といってもよいが、その活き活きとした表情の中には、石原さんよりも深いしわが刻まれていることにも気づかされる。男性のしわには、経験の年輪が刻み込まれているものだ。「男の顔は履歴書」という言葉もある。それがかえってその人特有の魅力をかもし出す、と感じている女性も少なくないはずだ。でも、睡眠時間が1日数時間かと噂される、みのさんの破顔一笑には、キリリとしたさわやかさだけでなく、疲れのかげりもほの見えている感じがした。ストレスがじんわり忍び寄っている、そう感じさせるような深いしわなのだ。それに比べると、石原さんの顔にはしわが少なく、ストレスのかげりもない。実年齢ほどの老いを感じさせない。威風堂々の中に、みずみずしい若さを感じさせるものがある。これはどういうことだろうか。だれであったか、(哲学者の森有正であったか)、樹木は数百年を生きている巨木であっても春になるとみずみずしい新芽や若葉が出て来る、人間の老いの中にもそうしたみずみずしい心が宿る時はないだろうか、というような意見を述べていたような気がする。私は美容の現場に従事するものとして、同じことを肉体の上で思うのだ。「肉体がどんなに老いの季節を迎えても、みずみずしい若さを宿すことはできないのだろうか」と。石原さんの凹達な表情を見ていて、そんな老いの中に宿る若さの輝きについて考えさせられた。私たちは、苦しみや疲れを感じさせない新しい若い芽を、どうしたら熟年期の時の宿りとして持てるだろうか?という問いである。目の下の防寒服と赤ちゃんのお尻のアザところで、さらに美容の現場の感想を付け加えさせていただくと、お二人の顔には個性と魅力があふれているが、私が気になったのは顔のしわより目の下のたるみである。目の下のくまやたるみには年輪の風格の魅力はないし、どう見ても邪魔な老化現象としか言いようがない。もし、みのさんと石原さんに、この目の下のたるみがなかったとしたら、お二人の顔は、もっとスッキリと画期的に若返るはずなのだ。では、なぜ、しわはそれほどでもないのに、目の下のたるみは、老いということを顕著に感じさせるのであろうか?答えは簡単、しわは笑いじわのように顔の表情に伴ってあらわれてくるのに対して、たるみは皮膚、皮下組織のゆるみが原因で、重力に抵抗できずに起こる決定的な老化現象だからである。老化現象に伴うたるみは、体全身に起こってくるのだ。身近な例を男性の場合にとれば、30代に突入して油断をしているとおなかが出てくる。男性は体質的に内臓に脂肪がたまりやすいため、運動不足になるとおなかに脂肪がつきやすくなる。若い頃から運動を嫌って敬遠している人では腹筋が発達しておらず、20代後半でもおなかに脂肪がたまってくるだろう。こうした「中年太り」も動物としての老化現象の一つであり、自分で獲物をとれなくなった個体はおなかに脂肪を蓄えて栄養の維持をはかる、という生命の防衛本能が働いているわけだ。逆にいうと、若くはつらつとした健康体は、いつでも獲物を得られるため、体には余分な脂肪をつけている必要がないということになる。同じことが顔の場合にもいえるのである。引き締まった顔つきは、若さそのものだ。それは精神の働きを敏感に、はつらつと伝えてくる。しかし、重くゆるんだ顔つきには衰退があらわれる。変化と感情にも乏しく、魅力が感じられないだろう。……というような、印象を形成してしまうのである。顔のたるみは、老いの到来そのものだ、といっていいかもしれない。たるみのもととなるのはおなかと同じように、過剰脂肪がその原因だ。これは我々がモンゴル民族から引き継いだ遺伝子の賜物にほかならない。私がこの治療にこだわる理由はそこにある。どんなに魅力的な生き方をして快活に暮らしていても、目の下のたるみは自分で解消することはできない。あるいは、どんなに辛抱強く真面目にダイエットを続けてみても、目の下の過剰脂肪だけはどうにもならない。それは、この脂肪が、祖先が寒さから目を守るために用意したモンゴロイドの生の記憶を内包している防寒着だからだ。いまは無用となった赤ちゃんのお尻のアオアザ、シッポのあとのようなものである。この目の下のたるみ、脂肪の除去治療は、一般には「脱脂」と呼ばれている。しかし、私の治療ではそうした呼称を用いない。それだけではたるみはきれいにとれないからである。私の行っている目の下の治療では、脂肪の除去は50%の目的しかなく、あとの50%は目の下の皮膚の「リフトアップ」の操作を目的としている。この操作は、たとえていえば、ラーメン屋さんにおける「秘伝のタレ」のようなものであって、詳しく説き明かすことできないが、それは私の手掛けた数多くの症例経験の中から治療の蓄積・進化として生み出された結果なのである。私の治療を受けた患者さんたちは、そのあとでだれもが決まって「他人の目の下のたるみが気にかかることが多くなった」と語る。彼らがもし、トーク番組『さしのみ』を見ていたとしたら、みのさんと石原さんお二人の目の下に目が止まり、あのたるみがとれていたらもっと「老いの中の若さ」が輝くのに!と感じていたのでは……、と思うのである。