日本の企業の中にも、「大家さん」がいます。老舗で言えば、三菱地所、新興勢力では森ビルが有名です。どちらもバブルの時期を経験しました。しかしながら、どこかの大手分譲会社のように、「借金棒引きをお願いした」などというニュースは、聞いたことがありません。三菱地所は、平成14年の暮れに「丸ビル」をオープンさせ、日本中の話題をさらいましたし、森ビルも、「六本木ヒルズ」という名の新しい都市空間をつくって、人とビジネスシーンの流れを変える勢いです。同じ不動産業者なのに、大手分譲会社や一部のゼネコンとは、どこが違うのでしょうか。理由は簡単です。「大家さん」である三菱地所や森ビルは、安定収入を指向し、大手分譲会社などは「濡れ手で粟」を目指したのです。目指す方向、努力のフォーカスが違いを生んだのです。安く買った貸家も、同様の危険をはらんでいます。貸家を売却して一握千金を狙うか、余剰金により新たな貸家を入手するか、所有者には選択の自由があります。貸家業を拡張せず、そのまま立ち止まる権利もあります。野茂、イチロー、石井、松井、いずれもメジャーで活躍している野球選手です。彼らは、突然メジャーリーガーになったのではありません。努力して夢を実現させたのです。「大家さん」稼業は、一理千金の世界とは無縁の地味な(堅実な)ビジネスですが、まんざら捨てたものでもありません。実現すれば、寝ていても毎月、家賃が入ってくるのですから、二度に3億円」などという発想がなくなります。それも、飽きずに着実にやれば、春の山登り程度の努力で、頂上に到達できます。莫大な自己資金も、突出した才能も、頭のよさも必要ありません。きわめて、現実的な話です。「バカでした。あの頃は、お金がお金に見えませんでした。あの頃遊んだ一目分の飲み代があれば、もう一度勝負できるのですが」その昔、ドキュメンタリーで見たバブル紳士回顧録のひとコマです。積み重ねた結果でなければ、たとえ大きな成果が上がったとしても、結局は器に収まりきらないのでしょう。お金は、いとも簡単に離れていくものなのです。
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