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引合いに出されるが二対八の法則

一九九八年一ー月、国の産業政策の一環として織維ビジョンが発表されて早や五年がすぎた。その中で日本の織維産業の課題の一つとして「市場主導時代への対応不全」があげられていた。つまり、市場主導時代においては何よりも消費者を起点とする市場重視の供給体制の構築が必要であるという指摘である。なるほど、長い間、日本のファッション産業はデザイナーズブランド時代の熱にうかされてきた。当時は、客志向より生産者、デザイナー志向の時代であった。そこから抜け出すにはプロダクトアウトの発想からマーケットインの発想転換をしなけばならないという意味なのだ。しかし、このような美辞麗句ばかり並べても具体的に欠けるのがお役所仕事の通例である。同レポートは相容れない高コストで非効率な供給体制を指摘していた。不明確なリスク分担、分断された多段階構造などが温存されているというものであった。マーケットイン体制の構築は道中にあり、とりわけ企画−開発には何よりもまず消費者への生活価値提案能力が必要であるとしていた。しかし、いつ潰れるかわからない繊維産業に対しては、もっと具体的な提案が必要だったのだ。消費者志向のマーケティングの重要性が叫ばれてすでに三〇年以上が経過している。そしてこの不況の中で唯一、成長を続けてきたのは消費者(顧客)志向のマーケティングを実践してきた企業だけなのである。よく引合いに出されるが二対八の法則である。利益貢献の高い上位二〇%の顧客が全体の利益の八〇%をもたらすという原則だ。したがってコトラーの理論は、利益に結びつく顧客を見つけだし、維持し、育てる科学をマーケティングだと言う。